読書メモ

2022年01月08日

読書メモ1月上:伊集院静『ノボさん』柴崎友香『きょうのできごと』桜庭一樹『青年のための読書クラブ』

今年も愉しい世界に出会えるかな!

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『ノボさん』  伊集院 静

〈伝記物語、青春小説〉正岡子規の幼名のぼるに愛情をこめて
ノボさん。俳句の難しい解説はなくエピソードを挟みスラ
スラ読めてその好ましい人となりがよくわかる。松山で漱石と
50日あまり同居、俳句「柿食えば・・」のエピソード、鴎外・
寺田虎彦・河東碧梧道との交流。町人隠居の俳句が文学となる、
写生の本髄が平易に説明される。病苦との闘い、母と妹
の献身、が身に染みる。
〈講談社BOOK倶楽部〉明治二十年二十才になったベースボー
ルに夢中の青年は文学のあらゆる表現に魅入られる。東大予備
門で夏目漱石と運命的な出会いをはたす。二人は人生を、夢を、
恋を語った。明治三十五年子規の余命が尽きるまで交際は続く。
14年司馬遼太郎賞。


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『きょうのできごと』 柴崎友香

〈会話を重ねながら〉特別な事件ドラマが起るわけでもなく話は進む。
会話から心の流れ、前のこと後のことが、想像されてゆき、
それなりに味わいがある。前に読んだ14年芥川賞『春の庭』を思い出
すでデビュー作。2000年、行定勲監督の映画原作で妻夫木聡、田中麗
奈が出演。
〈うら表紙〉ある晩、友人の引っ越し祝いに集まった数人の男女。彼ら
がその日経験した小さな出会い、せつない思い。5つの視点で描かれた
小さな惑星の小さな物語。

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『青年のための読書クラブ』 桜庭一樹

〈少女がすべて主人公〉03『GOSICK』08『私の男』直木賞と読んだ
が、小説のジャンルが広い
。ちなみに性別を問わない現代だが、
著者は女性。
〈Shinchosha Web〉東京山の手に敷地が広がる名門女学校聖マリアナ
学園。清楚でおだやかな少女たちが通う学園はしかし謎と浪漫に満ち
ていた。転入生・烏丸紅子がその中性的な美貌で皆を虜にした恋愛事
件。教師に没収された携帯を取り戻してくれるブーゲンビリアの君の
・・・・。読書倶楽部部員たちの華々しく可憐な物語。

 

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2022年01月19日

読書メモ1月中:長岡弘樹『傍聞き』青山七恵『かけら』押切もえ『永遠とは遠い一』

図書館が年末休みになる前にまとめて借りたものを読む。
写真はスマホ、文はパソコンで打ちこみ、
スマホで見ると文末がそろわず見にくいメモです。

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『傍聞き』 かたえぎき  長岡弘樹

〈短編4〉08年日本推理協会賞短編賞『迷い箱』更生保護施設の
女性施設長と終了し工場務めの男性『989』消防官と知り合いの救助
女性『迷走』救急車を運転する隊員と隊長の話。
〈表題作がいい〉傍聞きとはどうしても信じさせたい情報は別の人に
話しそれを聞かせると漏れ聞き効果があるという意味。強行犯係の
羽角啓子(夫は事故死)と娘葉月の物語。隣に住む老女が居空き(人がいて
の空き巣)にあう事件に遭遇する。上質で愛情にあふれるミステリ。
TVドラマ『教場』の作者。

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『 か け ら 』  青山七恵

〈shinchosha web〉家族全員で出かけるはずだった日帰りのさくらん
ぼ狩りツアーに、ふとしたことから父と二人で行くことになった桐子。
口数の少なく「ただのお父さん」と思ってた父の意外な顔を目にする
表題作と3つの短編集。
〈09年川端康成賞〉取り立てて物語のあるわけではないが、ひと対ひ
との観察から気づくものがゆるく描かれる。以前読んだ『ひとり日和』
07年芥川賞作品もそうだったように、流れる空気の良さが少しずつ沁
みこんでくる。

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『永遠とは違う一日』 押切もえ

〈モデルの作者の文芸誌デビュー作〉お仕事小説の6短編。朝日新聞
の土曜図書欄担当で気鋭の書評が載るので読んでみる。
〈shinchyousya web〉「誰かに認められたいなら全力でやって」路代
はマネエジャーをするモデルの咲子に不満を抱いていた。憧れのバンド
7BOYSの傍らで働くために上京して早四年。夢見る場所は遠すぎるー。
スタイリスト、絵描き、女子アナ、アイドル。華美な世界で生きながら
決して特別でない女性たちを描く作品集。



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2022年01月31日

読書メモ1月上:米澤穂信『満願』恩田陸『蒲公英草子』伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

 ミステリ、ファンタジー風の
話に託されて「人」が語られる。

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『 満 願 』  米澤穂信

〈以前〉01年『氷菓』を読む、学園ミステリで古典部の活躍が印象に
残る。今回の作品は14年山本周五郎賞やミステリ3冠。18年NHKミス
テリースペシャルで3本放送される。多様な6短編集。
 『夜警』交番の3人、殉職した巡査の真相『死人宿』旧知が中居をす
る温泉宿で火山ガスの死亡事件、自殺か事故か『石榴』小学生の姉妹に
親の離婚で親権問題が起こり妹の体の傷は?『万灯』バングラデシュで
天然ガス採掘権を得ようとする駐在員の事件『関守』峠の都市伝説を取
材するライターに関わるできごと、バラエティに富む。
 表題作『満願』が特に良い。苦学して弁護士になった男が元下宿で起
きた殺人事件の真相に迫る。謎解き、人情、古風な情景、描写の力なの
か短編の醍醐味がある。

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『蒲公英草子 常野物語』 恩田 

〈山を越えれば〉すぐ福島で、ゆったりと阿武隈川が流れる。槙村家
という古くからの名家の聡子お嬢様のお話し相手で隣に住む医師の娘
峰子の日記たんぽぽ草子の体をなす。記憶をそのまましまい込み、
未来を予知する不思議な能力のある常野という一族があらわれる。
戦争を経て新しい世紀に入っていく時代に成長していく二人を
中心にして物語られる。
〈前に書かれた〉『光の帝国 常野物語』読んだが、この蒲公英草子
の方が始まりの物語だ。民俗学的な雰囲気で日本なのか、外国なのか
ファンタスチックな話である。作者は様々なジャンルの物語を紡ぐ。

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『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

〈仙台で〉僕、椎名は大学に入学するために下宿する。2年前の住民
と現在の僕の物語が頻繁に交代して語られる。作者の狙ったものか
人物までもが混乱してくる。読むのを休むと分からなくなるので、
メモする・・・。僕は不思議なオーナー麗子さんのところでバイトし
ペット殺しの事件が発端になって展開する。ボブデュラン「風に吹か
れて」の歌に引かれ、ほほえみながら、くすっ!としながら読む。
〈伊坂幸太郎は中毒になる〉砂漠、オーデボンの祈り、死神の精度
AX、ゴールデンホッパー、で6冊目かな。


               





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2022年02月09日

読書メモ2月上:柚月裕子『盤上の向日葵』山崎ナオコーラ『美しい距離』津村記久子『アレグリアとは仕事ができない』

将棋指し、がん患者、事務機器と闘う会社員、
周囲との愛と憎しみのドラマ。

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『盤上の向日葵』 柚月裕子

〈18年本屋大賞2位〉本格的ヒューマンミステリーと呼ばれる。将棋
に詳しくなくても面白い。19年NHKドラマ大友康平、竹中直人、千葉
雄大、蓮佛美沙子。
〈chuko web〉埼玉県の山中で白骨死体が発見された。遺留品は名匠
の将棋駒。叩き上げの刑事と新米刑事が駒の足取りを追って日本各地
に飛ぶ。折しも将棋界では実業界から転身した異端の天才棋士・圭介
が世紀の一戦に挑もうとしていた。

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『美しい距離』 山崎ナオコーラ

〈bunshun  web〉ある日、サンドイッチ屋を営む妻が末期がんと
診断された。夫は会社の仕事をしながら看護の病院に通い詰めている。
病室を訪れるのは、妻の両親、仕事仲間、医療従事者たち。医師が
用意した人生ではなく、妻自身の人生をまっとうしてほしいー。がん
患者が最後まで社会人でいられるのを問う、新しい病院小説。
〈島清恋愛文学賞〉患者まわりの関係者それぞれの心遣いが、夫を通
してよくもわるくも丁寧に描かれる。サンドイッチ屋の仕事仲間が
秀逸だ。16年芥川賞候補、時代を読む小説なのだろう。

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『アレグリアとは仕事はできない』 津村紀久子

〈05年芥川賞の〉『ポトスライムの舟』後、08年の作品で良い。
 ミノベという女性社員が使用している、地質調査業のオフィスに
置かれている複合コピー機の名前がアレグリア。地質柱状図という
カラーのとても長い複雑な資料を作成する。
アレグリアはよくスト 
ップする、あるのに用紙切れ、ウオームアップ
中を表示。スイッチを
入れると取説にないコード番号を表示。アレグリアはまるでミノベを
小馬鹿にしているように心を持つよう・・・・・
オフィスの他のメンバ
ーとの関係、ミノベの人格を語る小説としても面白く読める。「チヤッ
プリンのモダンタイムス」のようにも読める。


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mcobalt at 10:55|Permalink

2022年02月20日

読書メモ2月中:永井路子『炎環』池永陽『珈琲屋の人々』田口ランディ『コンセント』

歴史、人情、サスペンスとなんでも。

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『炎環』 永井路子 女性作家シリーズ

〈歴史小説〉源頼朝の旗揚げから承久の乱まで、65年直木賞、4中編のオムニバス形式。
 『悪禅師』頼朝の異母兄弟で、京の醍醐寺から駆けつけた全成の視点で『黒雪賦』梶原景時を通して『いもうと』政子の妹保子の視点で『覇樹』北条時宗を通して、それぞれの野望と挫折が描かれる。
 歴史小説なのに分かりやすい語り口。四つに 分かれいるのもの読みやすい。戦闘場面もあっさり。できごとに合わせて頼朝と政子の顔の表情と心の中が再現される。乳母の夫たちが権力を握ると言う作者の独自の解釈。
 79年NHK大河ドラマ『草燃える』の原作。大正14年生まれ昭和年数が年齢になる。晩年近くまで鎌倉に住む。

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『珈琲屋の人々』池永 陽

〈futabasha web〉東京下町の商店街にある珈琲屋。主人の行介はかってある理由から人を殺していた・・・・。心に傷を負った人間たちが店で語る様々なドラマ7編。  
〈14年NHK〉高橋克典、木村多江、倉科カナ
完結する短編がつながり大団円になり、TVドラマむき。

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『コンセント』田口ランディ

〈Google Books web〉腐乱死体となって発見された兄の死臭を嗅いでユキは死臭を嗅ぎ分けられるようになる。兄はなぜ引きこもり、生きるのをやめたのか。そして自分は狂ってしまったのか。悩んだすえ、かっての指導教授であるカウンセラーを訪ねるが・・・・。
〈ジャンル〉は心理フィクション、サスペンス、性的オカルト。カウンセラーは文学部出で薬を出せない、医学部出の精神科医は人間の死体の腑分けという治療者になる禊ぎを受けた。ラストでユキがシャーマンになるところが興味をそそる。



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